Saturday, April 27, 2013

米国における起業文化の地域によるバラツキ。

最近ブログを書けていないのですが、「アメリカ=起業文化」ではなく、「シリコンバレー、ボストン、NYC=起業文化が根付いている」、という面白いデータが出ていたので共有します。やはり投資額はシリコンバレーが圧倒的で、これにボストンとNYCを加えると全米のベンチャー投資額のうち7割以上になります。元記事はこちらから(→リンク)。

Richard Florida:

http://boss.blogs.nytimes.com/2013/04/26/what-it-takes-to-create-a-start-up-community/

Sunday, March 10, 2013

原子力×イノベーション

原子力分野へのベンチャー投資が(予想通り)福島以降大幅に減っているという結果が最近出ました。(出典:Cleantech Group)

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もともと参入障壁の高さから案件は少なかった分野で、毎年の投資額推移も全体像を捉えているというより数社の活動に影響されているだけという状況ですが、「原子力ルネサンス」を提唱して大幅に伸びるかと思われた分野が少し躓いた形に見えます。フクシマ以前から建設コストの増大や天然ガス価格の低下などで投資熱が少し冷めかけて始めていましたので、原子力分野への投資額低下は長期トレンドとして続くかもしれません。

Saturday, February 9, 2013

東大イノベーション政策研究センターでの発表資料

2月1日、東大イノベーション政策研究センターのセミナーでクリーンテックの現状についてお話させて頂きましたが、その際の資料をシェアさせて頂きます。多くの方に参加いただき、私にとりましても非常に楽しい機会でした。

要点としては下記のとおりです。

1.
クリーンテック投資は2006-2008年のバブル期をピークに減少傾向にある。ソリンドラの倒産、A123の中国企業による買収後、状況はより一層厳しくなってきている。

2.
現在の投資はシリーズC以降(開発後期)が多く、シード期(開発初期)のものは激減している。クリーンテック業界が今後成長してゆく上で、初期技術への投資が減っていることが大きな課題になっている。

3.
クリーンテック業界は新たなモデルを模索しているように見える。ドットコム、ソーシャルメディア型の「ベンチャー投資→上場」というパターンは成功しづらい。一方で、人口増加と資源枯渇はグローバルな長期トレンドであり、クリーンテックへの需要は増えてゆく。早い段階で大企業と提携しながら会社を発展させるなど、長期投資の枠作りが必要になってきているのではないか。

4.
日本で雇用を生み出すクリーンテックベンチャーを生み出すにはどうしたら良いか。明確な答えはないが、徐々に生態系を作り上げてゆくことが重要と考えられる。




クリーンテックブーム終焉?

A123の倒産以降、クリーンテック全体が厳しい状況にあることは以前ポストしましたが、現場レベルで「風向き」として感じていたものがデータで出てきました。私の今の見方は、ある意味ブームが完全に終焉して、長期投資が必要であること、ROI(投資に対するリターン)は思ったよりも高くないこと、最終製品はコモディティで更に既存のユーティリティーが高い参入障壁を築いているといった現実を受け入れてまででも投資したい会社だけが残っているのかなと思っています。一方で、Venture Capital投資→IPOというドットコムやソーシャルメディアで成功したモデルはクリーンテックでは成功しづらいことも明確になってきて、業界全体が本来あるべき姿に落ち着いてきたとも言えると思います。このあたりは、最近のBoston Globeの記事にも出ていました。

Clean Tech Groupのデータによると、初期技術は大幅に減少中。このデーターはPWCのレポートなどにも出ていますが、確実なトレンドとして目に見える形になってきました。
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また、Vantage Point(VC:ベンチャーキャピタル)が資金を集められず、クリーンテックファンドをあきらめるといったニュースもありました。Vantageはホワイトハウスとの関係も強く、クリーンテックブームの中心を担ってきたVCでもあります。

燃料電池自動車を巡る提携関係


燃料電池自動車を巡っての提携が盛んになっています。燃料電池自動車は、各社ともに2015年からの本格普及を目指していて、今後2年の開発へ向けリソースを集約させることが大きな課題になっています。日本の4大都市圏、米国のカリフォルニア州(LA都市圏とベイエリア)は2015年へ向けて水素インフラを立ち上げることが目標になっていて、カリフォルニアの水素ステーションは2016年までに68箇所(カリフォルニア燃料電池パートナーシップのレポートの和訳を参照)、日本は東京、名古屋、大阪、福岡の都市圏に100箇所の整備(イワタニさんのプレゼンを参照)目指しています。



燃料電池は効率の高い発電機ですので、EVの航続距離を伸ばしながらも、排出量がゼロなエコカーを目指して開発されてきました。航続距離が長い場合には、燃料電池の方がシステムコストが安くなることが理由です。(トヨタさんの資料経産省の資料を参照)ただし、車用に使われている高分子型の燃料電池は水素以外の燃料を使用できないことが課題で、水素インフラが必要なことが大きな実用化への障壁になってきています。現在はリース販売が主で、カリフォルニア州(LA都市圏が中心)では個人向けリースも月額600ドル程度で可能です。(こちらにリストあり)私も分野柄殆どの車に乗ったことありますが、HondaのClarityなんかは非常に乗り心地の良い完成度の高い車で、加速性能も良いのでセカンドカーとしてだったら使ってみてもいいなぁと思うレベルまでの完成度があります。(Hondaのリースサイト)このClarityは2008年に一般向けにリース開始したのですが、最初のお客さんは東京のホンダ本社でAsimoがお迎えするというオマケ付でした。



現在は、マーケティング理論的には完全に初期の「イノベーター」が興味本位で使っている段階です。2015年にはカリフォルニアで1万台程度の普及を目指すということですが、これでもLA都市圏に約550万台の車があることを考えると、0.1%程度。日本は普及初期に10万台という目標はありますが、現実には数万台が限度と考えられるのでこれも四大都市圏の車の台数合計が1700万と考えると0.1%程度。(ざっと統計から見積もって東京から30km圏内で約800万台、愛知が約400万台、大阪が約300万台、福岡200万台。日本全体では5900万台なので、四大都市圏で29%程度)まだまだ、向こう5年くらいはイノベーターにしか渡らない商品かなと思います。



さて、このイノベーターからアーリーアダプターやアーリーマジョリティーへ、つまり数万台から数十万、数百万と増やしてゆく中で重要になっていくのが下記の2点。この2つが解決されないのであれば、燃料電池自動車は「エコの本命」とは呼べない厳しさがあると思います。

1.水素の製造
「水しか出さない究極のエコ」と言っているものの、実際には化石燃料から水素を作る過程で二酸化炭素が出てしまうので、これはマイナスです。製鉄所などで発生する副生水素を使用する方法ですと、一応リサイクル利用なのは環境負荷は掛からないのでOKですが、この生産量は工場の生産と共に変化するので、大規模普及のためには、他の方法も必要になります。副生水素は、石油化学業界から72億Nm3 供給可能というデータを元に、水素自動車の年間水素消費量700Nm3 として考えると数十万台までは副生で十分に賄えることにはなります。究極のエコにするためには、太陽光や風力で水を電気分解するのが理想ですが、都市ガス改質などの方法に比べて価格で負けてしまうのが難点です。光触媒を使っての水素製造などのイノベーションが求められているのは、それが理由です。この部分は2020年以降の普及へ向けて凄く重要な訳です!下の写真は米国マサチューセッツ工科大学のスピンオフ、Sun Catalytixの光触媒水素発生。(ちなみに、現在の水素ステーションの水素源についてはイワタニさんのページをご参照ください)



2.プラチナ低減

燃料電池にはプラチナ(白金)が電極に使用されていて、価格が下がらない大きな要因になっています。プラチナの価格変動は大きなリスクになる要素で、ここ20年のアップダウンを見てもお分かりのとおり、値段はグイグイと上がっています。さらに、プラチナは南アフリカが75%、2位のロシアも含めると88%の生産を占めている極めて「危険」な資源なので(資料)、水素使用で石油からの脱皮を図っても別のリスクを抱えることになります。また、プラチナは使用量が上がると価格も上がるという「規模の経済」とは逆の動きをしますので、燃料電池自動車が大量に普及する際のプラチナ価格はグイッと上がる可能性があって、結局台数を出しても価格下がらずという結果になる可能性は大いにあります。


と、色々と現時点としてはエコカーとしての課題が多いのが燃料電池自動車です。今の技術レベルやインフラ整備の大変さを考えると、たしかにハイブリッドや電気自動車の方が魅力的ではあります。一方でポテンシャルは無限大の技術なだけに、どこまで技術が伸びるかに期待したいとこでもあります。

Thursday, January 17, 2013

ベンチャーの資金調達。

ベンチャーの資金調達方法のオプションをきちんと理解し、状況に対応しながら使い分けてゆくことは経営者にとって重要なことですが、このことについて上手く纏めているなぁと思ったのが、ARPA-E Summitという米国政府エネルギー省のイベントでのMatthew Nordanの講演でした。ということで、その動画を下記に貼り付けておきます。

少し長いのですが、重要な要点は下記の2枚のスライドかなと思います。



そのうち纏めて書きたいですけど、今日はこの辺で。詳しくは、講演を直接ご覧ください↓



Wednesday, January 16, 2013

九大でのセミナー 1月28日(金)14時から

九州大学でのセミナーは、先日のモントリオールでのセミナーと似た内容ですが、もう少し専門家向けにするつもりです。こちらは国際会議なので、英語で行います。

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Ultra-thin Film Solid-Oxide Fuel Cell Technology Development: Status, Challenges, and Opportunities

Solid oxide fuel cell (SOFC) is one of the cleanest ways to convert chemical energy stored in fossil fuel into  electricity. SOFC offers over 50 % electrical efficiency with low pollutant emission and low noise, and it can be utilized in various applications including portable electronics, remote power, and combined heat and power unit for homes. However, the technology has been under development for many decades, but not yet seen large scale commercialization due to issues in cost and durability.

SiEnergy Systems is developing ultra-thin solid oxide fuel cell that offers dramatic cost reduction and reliability improvement. The use of ultra-thin films reduces the amount of materials required in creating fuel cells, including rare-earth materials, therefore significantly reducing the material cost of the fuel cell. The material cost constitutes more than 50% of the overall cost for SOFC today. Additionally, the reduced thickness leads to the enhanced ionic conductance across the electrolyte, and enables SOFC operation at 350-550 °C, which is substantially lower than operating temperature of conventional SOFCs that is at 750 °C or above. SOFC operating at this temperature range avoids the disadvantages of conventional SOFCs, such as slow start-up time, costly materials and bulky thermal insulation, while potentially taking advantages of high energy conversion efficiency.

In this talk, recent advancement in thin film solid oxide fuel cell research and development will be reviewed with particular emphasis on thin film electrode development and large-area cell demonstration. Progress towards stacking and system development will also be presented.
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こちらは、水素先端世界フォーラム2013の一環です。参加のお申し込みは、直接主催団体までお願いいたします。

リンク
水素先端世界フォーラム2013
参加申し込み
当日のスケジュール


東大でのセミナー 2月1日(金)18時から

帰国時に東京大学に立ち寄らせて頂くことになりました。以下、詳細です。

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米国におけるクリーンテックベンチャーの動向と今後の課題
~ハーバード大学発ベンチャーでの実体験を基に~
(米国法人)サイエナジーシステム社 土谷 大

2000年代中頃に大きなブームを起こした米国のクリーンテックベンチャー(環境・エネルギー分野のベンチャー)だが、様々な要因が重なりここ数年は大幅な縮小傾向にある。とりわけ、萌芽期の技術への投資が極端に減少してきており、今後この業界が発展してゆく上での大きな課題となっている。

本セミナーでは、ハーバード大学発クリーンテックベンチャー(燃料電池)の立ち上げに携わってきた経験を踏まえながら、米国におけるクリーンテックベンチャーを取り巻くビジネス環境とその動向、大学発ベンチャーを立ち上げる面白さと難しさについて情報を共有し、日本でクリーンテックベンチャーを育成する戦略や課題について参加者と議論を行う。

プログラム(予定)
18:00-18:30 米国におけるクリーンテックベンチャーを取り巻くビジネス環境。
18:30-19:00 質疑応答、討論。
19:00-19:30 大学発材料ベンチャー立ち上げの難しさと面白さ。
19:30-20:00 質疑応答、討論

講師プロフィール
土谷 大(つちや まさる)
2005年慶應義塾大学理工学部卒。2009年ハーバード大学大学院から博士号取得(応用物理・材料科学)。博士号取得後クリーンテックの新技術(薄膜燃料電池)を商業化する会社を共同創業者として2011年に大学から独立させ、現在は商業化へ向け研究開発と会社運営全般の責任者を務める。2011年4月より九州大学水素国際研究センター客員准教授を兼任。
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参加のお申し込みは、直接東京大学イノベーション政策研究センター宛てにお願いいたします。

リンク
イノベーション政策研究会 第 33 回セミナー
東京大学イノベーション政策研究センター

Saturday, January 12, 2013

日本の起業環境に明るい兆し?

ここ2-3年ほど、我々の世代の日本の若手の意識(特に35歳以下の世代)は昔の大企業、系列思考から変わってきているなぁと思うことが多いのですが、それが色々なところで取り上げられるようになってきました。先ほど投稿したForbesの記事も、少しずつ改善の兆しが見えてきていることを書いていましたし、個人的には(他国と比較して状況はまだまだ悪いものの)かなり未来は明るいと思っています(というよりより、明るくしなければならないと思っています。)この傾向について書いているNY TimesとBBCの記事をシェアしておきます。

NY Times: Japan’s New Tech Generation
BBC: Japan: Entrepreneurs spur out-of-the-box thinking

Forbesに日本の起業事情に関する良記事。

アメリカの新聞や雑誌が日本のビジネスについて書くことは極めて少なくなってきましたが、Forbesの記事が今の日本の課題を指摘するという意味で良記事でしたので共有いたします。以前の投稿にも書きましたが、ベンチャー育成が重要な理由は国の成長の基幹になるからです。グローバル競争が激しく日本の相対的な地位が低下する中、大企業が永遠に育ち続けるということはありませんので、定期的なリストラは避けられません。一方で、新産業を育て雇用を増やすベンチャー起業は国の雇用を増やし経済を活性化させる役割を果たします。これが上手く機能しないと経済に停滞感を感じるようになるわけですが、日本の場合は1996年以降310万の仕事が大企業から失われ、120万の雇用がスタートアップで生まれました。従って、スキルのマッチングなどを除いても190万の仕事が日本から純粋になくなったことになります。

原因は複合的で資金原因等を指摘する人も多くいますが、私は人材育成が根本原因だと思います。大学の先輩や同級生を見たときに、もっと「かっこいい」ロールモデルが増えないと駄目だと思いますし、大企業の系統だったトレーニングや豊富なリソースがなくても逞しく成長できるだけの強いメンタルとスキルを持っている人材が増えなくてはいけません。そういう人材は、グローバルでも活躍できると思いますので、グローバル人材育成にもつながります。

リンク
Forbes:The Entrepreneurship Vacuum in Japan: Why It Matters and How to Address It

Friday, January 11, 2013

クリーンテックへの投資が再び落ちる。


どうもソリンドラの倒産以降(2011年9月)、クリーンテックベンチャーを取り巻く環境は極めて悪いのですが、それが顕著に現れたのが投資額の落ちです。San Jose Mercuryの記事にあったグラフをコピーしておきます。これも、そのうち纏めて書きたいと思いますが、状況は非常に悪いです。Tech ReviewChristian Science Monitorの記事も纏まっていたので、リンクを張っておきます。中でもTech Reviewのグラフとか見ていると「おー、ソーラーはバブルだったのですな」と気づきます。

Wednesday, January 9, 2013

携帯燃料電池がCESで初お目見え。

Nectar

MITのベンチャーでKPCB(ベンチャーキャピタルの草分け)から投資を受けているLilliputian Systemsが今年のCES(家電業界最大の祭典)で携帯燃料電池をお披露目しました。(記事へのリンク)まずは、この難しい技術をここまで持っていったことを讃えたいなと思います!彼らのアイディアは、MITのMTL(マイクロ技術研究所)で当初開発されたもので「マイクロ化学プラントを作って、小型で大容量の電池を作る」というコンセプトで生まれました。携帯ライターの燃料(ブタン)をシリコンで作った改質器に入れて水素にして、それをシリコンで出来た燃料電池に供給して発電しています。ちなみに、我々の開発している技術はこの次世代版で、彼らの構造より製造コストを抑えられるところに特徴があります。約300ドルで本体を発売し、10ドルで燃料カートリッジを販売するとのこと。東芝MTIMedisと多くの会社が世の中を騒がせては失敗してきた外付け燃料電池の分野でどこまで勝負できるか、ベンチャー企業としてどういう出口戦略で挑むのか、非常に興味があります。この分野の競合製品はアクアフェアリー(日東電工スピンオフ)とHorizonあたりでしょうか。ちなみに、アクアフェアリーは水(H2O)が金属を酸化するときに酸素が失われて水素が発生する機構を使って水素燃料を作っています。Horizonは水素貯蔵合金に蓄えられた水素を直接供給しています。



米国の理系博士号取得者の給与はどのくらい?

NSFの調査に科学・工学・ヘルス分野の給与の中央値が出ていました。備忘録を兼ねて貼り付けておきます。

政府から支援を受けた企業の買収は、政府の許可が必要になる?

Congress Takes Aim at A123’s Sale to China’s Wanxiang

さて、最近下院に提出された法案で話題を集めたのが、SMART-SALEという法案についてちょっとだけ触れておこうかなと思います。米国政府から支援を受けて研究開発をしたMIT発ベンチャー、A123が$256Mで中国のWanxiangに売られたことは前にもポストしましたが、似たケースを防ぐ法案が下院に提出されました。この法案が可決されると、同盟国以外の会社や個人がエネルギー省から支援を受けた会社を買収する場合、エネルギー省による審査と政府からのローンやグラントの返済が求められます。今回のA123のケースは買収が成立しているので影響はないですが、仕方ない流れかなと思います。本件に関するGreentech Mediaの記事はこちらから。

Sunday, January 6, 2013

九大に「次世代燃料電池産学連携研究センター」開設。

センター研究棟
http://fc.kyushu-u.ac.jp/index.html


西日本新聞に記事が掲載されていました。TOTO(北九州市)、西部ガス(福岡市)、京セラ(京都市)、三菱重工(東京)、JX日鉱日石エネルギー(同)などが大学内に研究開発施設を持つ画期的取り組みです。↓

燃料電池 次世代化へタッグ 大学の先端設備 企業の製品化力 九大内に12社が研究室


米国大学の中国進出と難題:グローバル化の中の大学



今週のEconomistに出ていた米国大学の中国進出と難しさについての記事が面白かったので、シェアしておきます。世界のトップ大学は海外展開を加速していて、アジア(=中国)への進出は各校にとっての大きな課題です。このあたりの大学の国際展開については、大学ランキングを作っているUS Newsの編集者だったBen WidavskyThe Great Brain Race: How Global Universities Are Reshaping the World という本の中で書いているので、興味がある方は読んでみてください。
私自身、ハーバードで博士号を取りましたが、自然科学系は今や中国人、韓国人、インド人しかいないのが現状で、米国のトップ大学でも活躍できる優秀な学生が多くいる(=学生獲得のマーケットとして魅力的)ということは事実だと思います。一方で、学術に対する倫理認識が薄く、盗作やカンニングが横行する中国の大学の現状に、中国進出することを躊躇う大学も出てきています。Yaleと北京大学が学部教育のプログラムをキャンセルしたことが、Economistの記事でも例として使われています。
アジアへの重心移動は世界的なトレンドで、こうした中国進出において米国大学が直面した課題は日本の大学がアジアのハブとして機能するにはチャンスだと思っています。また、厳しい受験と強固な初等中等教育を経て入学する日本の大学生の基礎学力レベルは、中韓印とまだ肩を並べられるレベルだと思うので、海外へのチャネル、教員の教育への意識、学生の学習への意欲さえ改善されれば、日本の大学にもチャンスは多くあります。そのうち、このことについて私自身が思っていることも書ければと思いますが、鍵はグローバル競争をきちんと理解することだと思います。関連することとして、安西前慶應義塾長が書かれていた記事「学生の主体性伸ばせ」はご尤もな指摘ですので、こちらもリンクしておきます。


1月28日(月)九州大学

1月28日(月)に九州大学に伺う予定です。九大は世界最先端の水素・燃料電池研究施設で、毎年訪問を楽しみにしております。詳細はこちらから↓
Fuel Cell and Hydrogen Production Symposium: “Alternative Materials and Devices”

Saturday, January 5, 2013

成功するクリーンテックベンチャーを作るには?

最近、面白いと思ったブログ記事がこちら。こういう記事は評論家的に書いているものなので、実行側(起業家サイド)は意見を取り入れながらも、会社を実際に運営しながら自分で正解を見つけてゆくのが正しいやり方だと思うのですが、面白いし的を得ている記事なので投稿しておきます。

Ref: What makes a great clean tech team? & What It Takes to Build a Cleantech Winner
by Mattew Nordan (Venrock)

彼らの分析の要点をグラフを元に纏めると、こんな感じです。

1.クリーンテックの成功要因はチーム>>技術、マーケット


2.創業チームの年齢はあまり関係なし(何歳でも可能性あり)



3.CEOが継続して会社の成長過程を支えている方が成功している。


4.創業前からお互いを知っているチームの方が成功しやすい。


Friday, January 4, 2013

材料系クリーンテックを取り巻く環境

そのうち纏めて書きたいと思うのですが、ソリンドラ以降、材料系クリーンテックベンチャーを取り巻く環境は極めて厳しくなっています。もう「材料イノベーション」なんて言葉は聴きたくないという投資家が多いのが現状で、その良例と思ったのがAlion(旧名Sun Print)のシステムへのビジネス転換。もともと、CdTe型薄膜を安価に作る材料プロセス技術として投資を受けていたのですが、、結局投資家が引いてしまい、もともとのコアコンピテンシーとは全く関係のない方向へ舵を切らなければなりませんでした。ソーラー系ベンチャーのValuation(企業価値)の落ちは極めて著しくて、正直頭を抱えてしまいます。本件に関するGreentechメディアの記事はこちらから。

パネルディスカッション@シリコンバレー

ふとしたことから、25日にシリコンバレーに行くことになりました。

Innovation in New Materials: The Future of Renewable Energy
Date: January 25, 2013, 6:30 pm to 8:30 pm
Venue: Plug and Play Tech Center, 440 N. Wolfe Road, Sunnyvale, CA
Registration: Online Registration

In his famous new book The Third Industrial Revolution, social scientist Jeremy Rifkin depicts us an attractive future blueprint of human society, in which abundant clean energy is produced and consumed in a decentralized manner thanks to the solar panels, wind turbines, and fuel cells installed in households and corporate buildings—all of these enabled by the advancements in material and energy technology.

To keep up with the beat of this new round of industrial revolution, CHAIN is setting up our next panel discussion on the latest developments in new material technologies, especially those related to alternative and renewable energy systems, such as solar cell, battery, and fuel cell. Join us at Plug & Play for an enlightening discussion with a wonderful panel of technology and business leaders in the field.

Panelists and Moderator

Kang Sun, CEO & President, Amprius
Masaru Tsuchiya, Co-founder & VP Technology, SiEnergy Systems
Gautam Ganguly, VP of Device Science, Bloo Solar
Homan Yuen, Co-founder & VP Technology, Solar Junction
Han Shen, Principal, Formation 8 Ventures
Kurt Berney (Moderator), Senior Partner, O’Meleveny Meyers LLP

Agenda

6:30PM—7:00PM: registration and networking (refreshment will be served)
7:00PM—7:10PM: host introduction of event & moderator introduction of panelists
7:10PM—8:30PM: panel discussion and Q&A

http://www.innovationchain.org/events/view/27

Tuesday, January 1, 2013

特許戦略。

特許戦略は技術系ベンチャーにとって重要な項目で、重要な経営判断事項です。そのうち特許戦略の立て方についても詳しく書ければと思っているのですが、とりあえずイントロ編ということで、最近良いと思ったWeb解説のリンクをシェアします。 「ウェブで学ぶ」時代なので、オンライン上のリソースだけでスタートアップに必要な知識は殆ど手に入るのですが、リンク先が分からないとなかなか見つけられないので、こういう情報も載せてゆく予定です。


A123が中国企業に買収される。


さて、最近ボストン周辺のクリーンテックベンチャーでは大きな話題になっていた、A123 Systems(MIT発のベンチャー)が倒産し中国企業に買収されるという話題を書いておこうかと思います。単なる米国企業の買収なら若干の抵抗はあるものの「時代の流れ」で済んだのですが、連邦政府から$250million(200億円くらい)の資金提供を受けて成長した会社ということで、米国民の税金が中国企業の成長を助けることになるということで、大きな話題になっています。本件の議論については、倒産話が出た8月頃にNPRが良く纏めていましたのでリンクしておきます。

我々のようなアーリーステージのクリーンエネルギーベンチャーにとっては、政府、ベンチャーキャピタル(以下VC)からの投資がさらに厳しくなるということで、かなり影響を受けます。政府から$527million(420億円程度)のローンを受けながら倒産した2011年9月のソリンドラ(Solyndra)同様、オバマ政権の掲げる製造業の復活、クリーンエネルギー産業育成を通じた雇用拡大という政策も岐路に立たされることは間違いないですし、政府のエネルギー政策は大統領の思惑とは反対に、非常に保守的なものになっています。エネルギー業界は、政府の方針や燃料や材料価格の変動に伴う浮き沈みが激しく、非常に難しい分野です。オバマ政権を批判する声もありますが、クリーンエネルギーへの積極支援はブッシュ政権から始まったものですし、一連の倒産は時代の流れの中で仕方のなかった結末だと思っています。

電池の分野は、無人飛行機(UAV)や兵士の電装などにとっても重要な分野ですので、国防への影響を懸念する声もあります。日本でもシャープのFoxconnによる買収提案や、中国のBYDが金型メーカを買収するなど似たケースがありましたが、今後10年間米国、日本共に企業の資金繰りが厳しくなる中、自国の雇用と技術をどう守ってゆくか難しい選択を迫られるケースが増えそうです。

ベンチャー企業の定義と意義

ベンチャー企業の定義というのは非常に難しくて、「起業」という言葉の定義を見ていると「中小企業」と「ベンチャー企業」がごちゃ混ぜになって議論されているのを良く見かけたり、ベンチャーを生むことのマクロな影響が理解されていないことが良くあります。私は国の競争力強化という視点からベンチャーに興味がある人間なので、ベンチャー振興を考える意味で重要な点を書いておきたいと思います。

1.ベンチャーは国の雇用確保、経済成長にとって重要。
Kauffman財団から出ているレポートから抜粋した米国の雇用統計にもあるように、ベンチャー企業は雇用を生む重要な源になっています。最近は、この伸びが鈍ってきているという指摘もありますが、まだベンチャー企業が生んでいる雇用は大企業が失っている仕事の数よりも多くなっていて、米国政府も不況下で仕事を生み出すプログラムとしてStartup America Initiativeを行うなど前向きに取り組んでいます。こうした取り組みがあるのは、米国経済全体への影響が認識されている為です。

2.中小企業(SME)とイノベーション(IDE)を基軸にしたベンチャーは根本的に違う。

これについて、上手く纏めているBill Aulet(MIT Entrepreneurship Center)のペーパーの図を貼り付けておきました。重要なのは1)グローバル市場を視野にいれていること(でないと、既存の経済圏の取り合いになってしまう)、2)技術またはビジネスモデルでイノベーションがあって、明確な競争優位性があること。3)高度なスキルが必要で、真似する事が難しいこと。この3つがない企業は時間と共に淘汰されるので、長期雇用を生み出したり高い経済効果をもたらすのは難しくなります。イノベーションを基軸にしたベンチャーは大規模な投資が長期に亘って必要なので、目利きやベンチャーを育てる生態系が重要になります。私が興味を持っているのはIDEのほうで、日本の高度経済を支えたソニー、ホンダといった企業はIDEの良例です。

ブログ開始!


謹賀新年!皆様、あけましておめでとうございます。

今年は2013年、というわけで1983年生まれの私は今年30歳を迎えることになります。30歳は「而立(じりつ)」の歳。まだまだ色々と薀蓄を語れるほどの経験はないのですが、そろそろ20代前半の大学生、大学院生、社会人の皆さんからは背中を見られる歳かなという思いもあり、可能な範囲で私の日々考えていることや経験を皆さんと共有してゆこうかなと思い、ブログを始めることを決意しました!どこまで続くか分からないですが、継続は力なりということで、息長く続けたいと思っております。日本の第三の開国は、若手からのボトムアップで作るしか方法はないと思っています。グローバルに活躍する若者がもっともっと増えなければ、日本の未来は明るくなりません。このブログが、20代の皆さんが日本から独立してキャリアを積んでゆかれることを検討して頂く参考になればと思っています。

内容は、1)アメリカで大学発クリーンエネルギーベンチャーを運営する中で日々感じていること、2)日本を離れ独立してキャリアを積んでいくことの面白さと厳しさ、3)長期的に成し遂げたい「日本の大学発グローバル企業育成」と「大学改革を通じた競争力強化」、4)面白かった本や記事の紹介、などについて、あまり気負わずに書いていくつもりです。「環境技術×ベンチャー×イノベーション」は日本再生の鍵を握る重要なテーマだと思っておりますので、活発にご意見を頂けると著者も励みになります。私の人生の目標は、日本から技術イノベーションを基軸にしたグローバル企業を生み出すことなので、その為のアドバイスも頂けると嬉しいです。

2013年が皆様にとって幸多き年となりますように!本年もどうぞ、宜しくお願いいたします。